野村総合研究所(NRI)は、経営コンサルティングとITソリューションの両方を持つ日本の会社です。企業の戦略や政府の政策を考えるシンクタンクとしての仕事と、金融を中心に大規模なシステムを作り、運用する仕事を一つのグループで行っています。

そのため、NRIへの転職を考えるときは、会社全体の知名度だけで判断せず、経営コンサルティングとシステムコンサルティング・ITソリューションの違いを理解する必要があります。どちらも顧客の課題を扱いますが、担当する工程、必要な経験、入社後のキャリアは異なります。

この記事では、NRIの組織、経営コンサルティングの仕事内容、強み、年収、働き方を整理し、中途採用の選考と対策まで解説します。

野村総合研究所とは?コンサルティングとITを持つ日本企業

野村総合研究所は1965年に設立されました。日本初の民間総合シンクタンクである旧野村総合研究所と、システム開発を担っていた野村コンピュータシステムが1988年に合併し、現在の事業の形ができました。

現在は、コンサルティング、金融ITソリューション、産業ITソリューション、IT基盤サービスなどを展開しています。経営コンサルタントは、このうちコンサルティング部門に所属します。

項目 内容
会社名 株式会社野村総合研究所
設立 1965年4月
上場 東京証券取引所プライム市場
主な事業 コンサルティング、金融IT、産業IT、IT基盤サービス
コンサルティングの顧客 民間企業、中央省庁、自治体、業界団体

出典:野村総合研究所 会社情報

経営コンサルティングとITソリューションの違い

NRIの採用情報では、経営コンサルタントとシステムコンサルタント・エンジニアの求人が分かれています。

比較項目 経営コンサルティング システムコンサルティング・ITソリューション
主な仕事 戦略、事業、組織、業務、政策の立案と実行支援 IT戦略、システム企画、開発、運用
主な成果物 経営の選択肢、制度、変革計画、政策提言 IT構想、要件、システム、運用サービス
向いている経験 経営企画、事業開発、政策、調査、業務改革 IT企画、PM、開発、アーキテクチャ、金融システム

経営コンサルタントもデジタル変革を扱いますが、自分でシステムを作ることが中心ではありません。経営課題を整理し、どの業務と仕組みを変えるかを決め、IT部門と連携します。ITの構想から実装まで専門性を深めたい人は、システム系の職種も比較すべきです。

NRIの経営コンサルティングの仕事内容

NRIの経営コンサルティングは、民間企業向けの戦略・変革支援と、官公庁向けの政策立案の両方を行います。公式の事業紹介では、5,000を超える業界・分野で、累計20,000を超えるプロジェクトに関わってきたとされています。

出典:NRI コンサルティング

全社戦略と事業戦略

中期経営計画、事業ポートフォリオ、成長戦略、海外展開、新規事業などを扱います。日本企業との長い関係をもとに、経営陣と継続的に議論する案件が多くあります。

市場と競合を分析するだけでなく、日本企業の組織で実行できる計画へ落とします。事業部ごとの利害、意思決定の手順、必要な人材まで見て、どこから変えるかを決めます。

業務改革とDX

営業、サプライチェーン、会計、人事などの業務を見直し、データとテクノロジーを使って変革します。NRIにはシステムの専門組織があるため、経営の構想からITの実装までグループ内でつなげられます。

経営コンサルタントは、システムの機能を決める前に、何のために業務を変えるのかを整理します。たとえば在庫を減らす案件なら、需要予測、販売計画、生産、調達のどこに原因があるかを見て、業務とデータの持ち方を設計します。

組織・人事と企業変革

組織設計、人材戦略、人事制度、変革の管理などを支援します。経営戦略を実現するために、どの組織へ権限を持たせ、どんな人材を育て、何を評価するかを決めます。

制度を作るだけでなく、社員の行動が変わるまでの進め方を考えます。事業会社で組織再編、人事制度、全社改革を経験した人は、関係者との合意形成を含めて経験を生かせます。

政策立案と社会課題

中央省庁や自治体に対し、産業政策、社会保障、地域政策、デジタル行政、エネルギー・環境などの調査と提言を行います。民間企業だけを顧客とする戦略ファームにはない、NRIの代表的な仕事です。

政策案件では、海外制度の調査、統計分析、企業や有識者への聞き取りを行い、制度の選択肢を作ります。効果だけでなく、予算、法律、実施する行政組織まで考えます。研究機関、官公庁、金融機関の調査部門で働いてきた人は経験をつなげやすいでしょう。

金融・産業の知見を生かす案件

NRIは金融ITで長い実績があり、金融機関の事業と業務に詳しい人材が多くいます。銀行、証券、保険、資産運用などでは、規制、商品、業務、システムを一緒に見られることが強みです。

製造、流通、通信、エネルギーなどでも、経営コンサルティングとITソリューションが連携します。業界知識を持つコンサルタントが経営課題を整理し、システムの専門家が実装を担う体制です。

NRIの強み

民間企業と官公庁の両方に顧客がいる

企業の経営戦略と政府の政策は互いに影響します。自動車やエネルギーのように規制や産業政策が大きく変わる業界では、企業だけを見ても将来を読めません。

NRIは政策と企業の両方の案件を持つため、制度が産業に与える影響と、企業の現場で起きていることを行き来して考えられます。社会課題を事業として解く仕事に関心がある人にとって、大きな魅力です。

戦略からシステム運用までつなげられる

NRIはコンサルティング会社であると同時に、大規模なシステムを長く運用する会社です。戦略の提言だけでなく、実装後に本当に使われるか、安定して動くかまで理解しています。

DX戦略を作るときも、導入の難しさ、既存システムとの関係、運用に必要な人材を踏まえて計画できます。実行できる現実性は強みですが、経営コンサルタントとして入社しても、案件によってITの比重が高くなることがあります。どのテーマを担当したいかは選考で確認すべきです。

日本企業との長い関係

NRIは日本の大手企業と長く取引し、経営陣と継続的に議論してきました。一度の提案で終わらず、経営計画、業務改革、ITの実装を何年にもわたって支援する関係があります。

クライアントの歴史と社内事情を理解したうえで助言できる一方、信頼を築くには時間がかかります。短い案件を次々と経験するより、一社の変化を長く追いたい人に向いています。

調査と発信の力

NRIは、社会・産業に関するレポートや書籍を継続的に出しています。案件の中だけで知識を使うのではなく、調査結果を社会へ発信する文化があります。

コンサルタントも、担当業界の変化を調べ、経営者や政策担当者に新しい論点を示します。情報を集めるだけでなく、自分の考えとしてまとめ、文章や講演で伝えたい人に合う環境です。

他のコンサルティングファームとの違い

比較先 NRIとの主な違い
MBB MBBは戦略案件を幅広く扱う。NRIは政策とIT実装まで自社に持つ
Big4 Big4は監査・税務・M&Aのネットワークを持つ。NRIは日本の政策・産業調査とIT運用に強い
アビーム アビームはERPを含む企業変革に厚い。NRIは公共政策と金融ITに強い
シンクタンク各社 NRIは調査・政策だけでなく、経営コンサルティングと大規模ITを持つ

NRIを「シンクタンク」だけで理解すると、現在の仕事の一部しか見えません。反対に、IT会社としてだけ見ると、政策や経営戦略の仕事を見落とします。応募先の部門と職種を確認し、自分がどの接点で働きたいかを決める必要があります。

野村総合研究所の年収

野村総合研究所の平均年収は1,069万円です。

出典:OpenMoney

経営コンサルタントの年収は、職位と評価によって変わります。目安は次のとおりです。

職位・段階 年収の目安 主な役割
若手層 600万〜900万円 調査、分析、資料作成、インタビュー
シニア層 900万〜1,300万円 担当テーマの設計、顧客との議論、若手指導
マネジメント層 1,300万〜1,800万円 プロジェクト管理、提案活動、人材育成
上位職 1,800万円〜 顧客関係、事業開発、組織運営

NRIは日本企業として給与制度を運用していますが、コンサルティング部門では成果と役割に応じて評価されます。中途採用のオファーは、前職の年収、専門性、想定する職位をもとに決まります。

上場企業であり、報酬だけでなく福利厚生や退職給付も含めて条件を比べられる点は、外資系戦略ファームとの違いです。提示年収だけでなく、賞与の扱い、住宅制度、働く場所も確認するとよいでしょう。

NRIの働き方と社風

自分の考えを外へ出す文化

NRIでは、調査した内容を報告書にまとめるだけでなく、経営者や政策担当者へ自分の見方を示します。若手でも、担当した分析について意見を求められます。

十分な根拠を持って考えることを重視するため、資料や文章を丁寧に作る文化があります。速く仮説を出し、データを確かめながら精度を上げていく働き方です。

長期的に専門性を育てる

一つの業界やテーマで案件を重ね、専門家として評価されるキャリアがあります。金融、製造、流通、公共、ヘルスケアなど、自分の軸を持ちやすい組織です。

社内公募やキャリア開発の制度もあり、経験を積んだ後に担当領域を広げる道があります。ただし、入社直後から自由に部署を移れるわけではありません。まず採用された部門で成果を出すことが前提です。

忙しさは案件と報告時期で変わる

経営会議、予算、政策の公表など、動かせない期限に合わせて仕事を進めます。報告前はインタビュー、分析、資料修正が重なり、忙しくなることがあります。

一方で、長期の調査や実行支援もあり、案件によって働き方は違います。面接では、希望部門の案件期間、チーム人数、出張の頻度、在宅勤務の扱いを確認しておくとよいでしょう。

NRIに向いている人

企業と社会の両方を見たい人

一社の利益だけでなく、産業や政策の変化まで含めて課題を考えたい人に向いています。官公庁、自治体、研究機関、金融機関の調査部門で働いた人は、経験を生かせる案件があります。

構想を実装へつなげたい人

経営戦略を作るだけでなく、ITや業務の実装まで見たい人にも合います。事業会社でDXやシステム刷新を企画し、実行部門との調整まで担った経験は、NRIの強みと重なります。

日本企業の意思決定を理解している人

日本の大企業や官公庁では、多くの関係者と合意を作りながら進めます。結論を速く出すだけでなく、相手の事情を理解し、実行できる落としどころを作れる人が活躍します。

経歴別に見るNRIへの転職

事業会社の経営企画・事業企画

経営計画、事業ポートフォリオ、新規事業、海外展開の経験は、民間企業向けのコンサルティングで生かせます。自社向けの計画を作った経験を、他社でも使える問題解決の手順に置き換えて説明します。

経営会議の資料を作っただけではなく、事業部の数字をどう検証し、どの投資を見直し、経営陣の判断がどう変わったかを話します。NRIでは調査と提言の質を重視するため、結論へ至った根拠も評価されます。

官公庁・自治体・研究機関

政策立案、統計分析、制度調査、有識者会議の運営などの経験は、公共領域の案件へつながります。担当した制度の説明より、社会の課題をどう定義し、どの選択肢を比べたかを伝えます。

NRIへ移ることで、政策を作る側だけでなく、企業や市民がどう動くかまで見られます。民間企業の案件も経験したいなら、担当した政策が産業や企業経営へ与えた影響を整理しておくとよいでしょう。

金融機関

銀行、証券、保険、資産運用の経験は、NRIの金融分野と強く重なります。商品や業務だけでなく、規制、リスク、顧客、システムの関係を理解していることが強みです。

経営企画やDXだけでなく、営業、審査、事務、リスク管理の経験者にも機会があります。現場で見つけた課題を組織全体の改善へつなげた経験を示します。ITの実装まで関心がある場合は、経営コンサルタントとシステム系職種の両方を比べます。

SIer・ITコンサルタント

IT戦略、PM、システム開発の経験者は、NRIの大きな事業基盤と重なります。経営コンサルティングを志望するなら、技術の選定より前の段階で、事業課題と業務を考えた経験を示します。

システム系の職種を選ぶ場合も、NRIでは顧客と長く関係を持ち、運用まで担います。作って終わるのではなく、安定稼働、改善、次の企画まで関わりたいという志向と相性があります。

他のコンサルティングファーム

戦略ファームやBig4から移る場合は、政策・産業調査やIT実装へ広げたい理由を話します。シンクタンクから移る場合は、企業の経営と実行まで関わりたい理由が接点になります。

中途採用の職位は、現在の肩書ではなく、案件で担った役割をもとに決まります。チーム管理、顧客責任者との議論、提案活動の経験を分けて説明します。

NRIのキャリアと成長環境

若手の経営コンサルタントは、情報収集、インタビュー、分析、資料作成を担当します。経験を積むと一つのテーマを自分で設計し、顧客への説明と若手の指導を担います。上位職では、案件の提案、顧客関係、専門領域の発信が中心になります。

NRIでは、特定の業界や政策テーマを長く追い、社内外から相談される専門家を目指せます。案件で得た知見をレポート、書籍、講演として発信する機会もあります。個別のプロジェクトだけでなく、社会に論点を示す仕事をしたい人に合うキャリアです。

キャリア採用者向けにも、研修、資格、社内でのキャリア形成を支える制度があります。制度があっても、希望する仕事が自動的に割り当てられるわけではありません。所属部門で成果を出し、専門性と社内の関係を作ることが、次の機会につながります。

NRIからの転職先

経営コンサルタントの主な転職先は、事業会社の経営企画、事業開発、DX、金融機関、官公庁、スタートアップ、ほかのコンサルティングファームです。

政策案件を経験した人は、公共政策や渉外、サステナビリティの責任者として評価されます。金融やITを経験した人は、金融機関の企画・DX、フィンテック、大企業のIT戦略へ進みやすくなります。

長い顧客関係の中で実行まで見た経験は、事業会社へ移った後も役立ちます。一方で、調査だけに担当が偏ると、実行責任を持つ求人では説明が難しくなります。在籍中に、提言後の変化まで追える案件を経験しておくと選択肢が広がります。

応募前に確認したいポイント

最初に、採用後の所属が経営コンサルティングか、システムコンサルティング・ITソリューションかを確認します。求人名に「コンサルタント」とあっても、担当工程は違います。

次に、民間企業と公共のどちらを中心に担当する部門か、主な業界は何かを確認します。入社後に両方を自由に行き来できるとは限らないため、最初の配属がキャリアへ与える影響は大きくなります。

オファー面談では、職位、報酬、評価制度に加え、最初に想定する案件と、部門内のキャリアを聞きます。外資系ファームと比べる場合は、基本給と賞与だけでなく、福利厚生、退職給付、勤務地も含めて条件を見ます。

NRIの中途採用

NRIのキャリア採用は職種別です。コンサルティング部門にも、戦略、業界、政策、組織・人事、業務改革など複数の求人があります。書類選考、適性検査、複数回の面接を経て採用されます。

出典:野村総合研究所 キャリア採用

応募する部門を選ぶ

最初に、経営コンサルティングとシステム系の職種を分けます。そのうえで、自分の業界経験と、扱いたい経営テーマが合う求人を選びます。

「NRIでコンサルタントになりたい」だけでは応募先が広すぎます。金融機関の成長戦略、製造業のDX、官公庁の産業政策など、取り組みたい課題まで具体的にする必要があります。

職務経歴書

職務経歴書では、担当業務と成果に加え、調査・分析の方法、経営層への提案、実行時の調整を書きます。NRIは調査の質を重視するため、どの情報から仮説を作り、どう確かめたかを説明できると強みになります。

政策や研究の経験者は、報告書の名前だけでなく、その提言が制度や事業にどう使われたかを示します。事業会社の経験者は、社内向けの仕事をクライアントへ提供できる形に置き換えて説明します。

コンサル転職向けの職務経歴書を作成する様子
コンサル転職の職務経歴書の書き方|構成・記載例・経歴別の伝え方コンサル転職の職務経歴書の書き方を解説。基本構成、実績の伝え方、経歴別の強調点、よくある失敗、提出前の確認事項を紹介します。...

適性検査と面接

適性検査では、計数、言語、論理の問題に備えます。面接では、転職理由、NRIを選ぶ理由、専門領域、入社後に扱いたいテーマを聞かれます。ポジションによってはケース問題や、特定業界についての議論が行われます。

ケース問題では、構造をきれいに分けるだけでなく、日本企業や行政が実行できる提案にします。関係者、制度、予算、システムなど、実行上の条件まで考えます。

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志望動機

NRIを選ぶ理由は、シンクタンク、経営コンサルティング、ITソリューションが一つの会社にあることと、自分の経験をつなげて話します。

たとえば金融機関でDXを進めた人なら、業界知識を使いながら、経営の構想とシステム実装をつなげたいという志望動機が作れます。官公庁で政策を担当した人なら、政策立案だけでなく、企業の変化まで見たいという理由が考えられます。

複数のシンクタンクや総合ファームを比べる場合は、求人ごとの仕事内容と採用職位をそろえて比較します。

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まとめ

野村総合研究所は、経営コンサルティング、政策・産業調査、ITソリューションを一つの会社で展開しています。民間企業と官公庁の両方を顧客に持ち、戦略の構想からシステムの実装・運用までつなげられることが強みです。

転職では、経営コンサルタントとシステム系職種の違いを理解し、自分が扱いたい業界とテーマに合う求人を選ぶ必要があります。調査と分析だけでなく、提案が意思決定や実行をどう変えたかを伝えられる人は、選考で強みを出しやすいでしょう。