ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、世界有数の戦略コンサルティングファームとして知られ、数多くの優秀な経営人材や起業家を輩出してきました。
国内外の大手企業や官公庁、スタートアップなどに対して経営戦略の立案から実行支援まで幅広く関わる中で、問題解決能力やリーダーシップが培われていることが特徴です。本記事では、BCGとはどのようなファームなのか、BCG出身者(アルムナイ)の進路や、実際に活躍している有名人・起業家の事例を通じて、その影響力と魅力を紐解いていきます。
BCGとは
ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、1963年にアメリカのボストンで創設された戦略系コンサルティングファームで、マッキンゼーやベインと並び「MBB」と呼ばれるトップクラスのファームの一角を担っています。
戦略立案から組織改革、新規事業開発、M&A、デジタルトランスフォーメーションなど、多岐にわたる領域でクライアントの課題を解決することで知られ、短期間かつ高い水準の分析力・問題解決力が求められる仕事の現場となっています。若手のうちから大きな裁量を持ち、クライアントの経営陣と直接コミュニケーションを取りながらプロジェクトを進める点も特徴の一つです。
BCGのカルチャーとしては「チームで協働し、成果を上げる」スタイルを重視しており、個人の能力だけでなくチームプレーを通じてクライアントへ価値を提供する姿勢が根付いています。結果、世界中の優秀な人材が集まる環境が形成され、多様なバックグラウンドを持つコンサルタントが活躍しているのもBCGならではの魅力です。
BCGのアルムナイ・卒業生の進路
BCGを経た後のキャリアパスは多岐にわたり、短期間で培われる戦略思考や分析力、コミュニケーション力はさまざまな分野で高い評価を受けています。特に以下のような進路が代表的な例として挙げられます。
事業会社の経営企画・事業開発
BCG出身者の多くは、製造業や金融、IT、消費財など幅広い業界の大企業に転職し、経営企画部門や事業開発部門で活躍するケースが少なくありません。コンサルタント時代に培った問題解決能力やデータ分析力、ロジカルシンキングは、企業内での新規事業立ち上げや組織改革、グローバル戦略策定などのプロジェクトをリードするうえで大きな強みとなります。社内外の多様なステークホルダーと連携しながら、経営視点での意思決定や戦略推進を実行できるため、将来の経営幹部候補として期待されることも多いのです。
起業・スタートアップ
BCG出身者は、起業家として新たなビジネスを創造する道を選ぶ例も多数見られます。コンサルティングで多くのビジネスモデルや経営課題に直面した経験、そしてドライブの強さやリーダーシップは、スタートアップを牽引するうえで大きな武器となります。実際にアニメーション関連企業で株式上場を果たしたり、生命保険業界に革新をもたらすベンチャーを創業するなど、複数の著名起業家がBCG卒業後に頭角を現しています。また、在籍中に築いたネットワークや投資家とのパイプが、起業時の資金調達やチーム編成をスムーズに進めるうえで大きなアドバンテージとなるケースもあります。
競合ファームへの転職
同じ戦略コンサル系のファームや、総合コンサルへの転職を選ぶBCG卒業生も一定数存在します。マッキンゼーやベイン、あるいはデロイトやPwCといった総合系コンサルで、より専門性を深めたり新たな領域に挑戦したりすることが目的の場合が多いです。すでに戦略コンサルの基本スキルを身につけた人材として即戦力になれるため、競合ファーム側からも積極的に受け入れられる背景があります。いわば「コンサルのキャリアを横に広げる」選択肢として検討されるパターンです。
投資ファンド・PEファンド
BCGでの経験を生かし、プライベートエクイティ(PE)ファンドやベンチャーキャピタル(VC)など投資家の道へ進むアルムナイも少なくありません。企業価値向上やM&Aなどのプロジェクト経験を通じて、事業の本質を見抜く力や財務分析力を身につけているため、投資対象企業のデューデリジェンスやバリューアップ施策の策定において大きな活躍が期待されます。ハンズオン型のファンドであれば、BCG時代の現場レベルの組織改革・戦略立案の知見を存分に発揮できるでしょう。
学術・研究・教育分野
MBAホルダーや博士号取得者、あるいはコンサルタントとしての実務経験を生かし、大学やビジネススクールの教授・准教授として研究教育の道を進む例も珍しくありません。企業の経営やマーケティング戦略を学術的観点で深めたり、後進の育成に携わったりする一方で、産学連携プロジェクトなどで企業と協働する場面も多く、ビジネスとアカデミアの橋渡し役を務める存在です。
BCG出身の有名人・起業家
BCGのアルムナイの中には、メディアやビジネス誌でも頻繁に取り上げられる著名人・起業家が数多く存在します。ここではその一部をピックアップし、彼らのBCG在籍時代と卒業後の活躍のポイントを簡潔に紹介します。
相葉 宏二
東京大学法学部卒業後、ハーバード大学大学院MBA取得を経てBCGに入社。東京やデュッセルドルフ事務所、さらに本社で取締役兼東京事務所ヴァイスプレジデントを歴任しました。BCG退職後は大学教員へ転身し、早稲田大学ビジネススクール教授を経て、現在は早稲田大学大学院商学研究科教授として、ファイナンスや戦略論の教育・研究に携わっています。金融とコンサルの実務経験を背景に、多くの学生・社会人に実践的な経営知識を伝える存在として活躍中です。
石川 真一郎
東京大学大学院理学系研究科を修了後、BCGに入社しハイテクプラクティスなどを担当。BCG在籍中にINSEADでMBAを取得し、卒業後は起業家として道を切り開きました。アニメ制作会社「ゴンゾ(旧GDH)」を設立し、同社がマザーズに上場するなどエンターテインメント業界で大きな成功を収めています。BCG時代に培った戦略的な思考法やネットワークが起業の後押しとなった好例です。
岩瀬 大輔
東京大学卒業後にBCGとリップルウッド・ジャパンを経て、ハーバード大学MBAを修了。28歳という若さでライフネット生命保険を出口治明氏と共同創業し、生命保険業界に新たな風を吹き込みました。代表取締役社長兼COOとして大企業の競合の中、インターネットを活用した革新的なビジネスモデルを打ち立て、顧客獲得や経営改革を成功させています。メディア露出や著書を通じて、起業家や若手ビジネスパーソンに向けたアドバイスを積極的に発信している点も特徴です。
三枝 匡
三井石油化学工業(現三井化学)からBCGへ転職後、コンサルティング会社を起業し、数々の企業再生や変革を支援。ミスミグループ本社で社長・会長を歴任し、企業価値向上を大きく進めた手腕が高く評価されています。現在は戦略相談役や一橋大学大学院客員教授として活動し、業界を越えて経営変革の支援や経営論の啓蒙に努めています。
冨山 和彦
BCGやコーポレイトディレクションで実務経験を積み、産業再生機構のCOOとして企業再生の実績を多数残しました。その後、経営共創基盤(IGPI)を立ち上げ、代表CEOとして投資・経営支援・事業再生の分野でリーダーシップを発揮。官公庁や省庁の各種審議会委員も務めており、ビジネスと行政の橋渡しとしても大きな影響力を持っています。
樋口 泰行
ハーバード大学MBA取得後にBCGで戦略コンサルを経験。コンパックや日本ヒューレット・パッカードなど外資系IT企業で成果を上げたのち、ダイエーの代表取締役社長に就任して再建を主導。さらに日本マイクロソフトの社長・会長として大きな変革を推進するなど、大企業のトップマネジメントを歴任する姿が注目されています。戦略的視点と強力なリーダーシップを活かし、企業変革や再生の現場で成果を上げてきた代表的な事例です。
安野 貴博
1990年生まれのSF作家・起業家・AIエンジニア。日本SF作家クラブ会員。ボストン・コンサルティング・グループ勤務後、株式会社BEDOREの代表取締役やMNTSQ株式会社の共同創業者などを歴任。現在は一般財団法人GovTech東京のアドバイザーを務めている。
三浦 健之介
渋谷教育学園渋谷中学高等学校、早稲田大学創造理工学部建築学科卒業。新卒で株式会社電通に入社し、その後ボストン・コンサルティング・グループに転職。2021年に日本初となる時差ビジネス企業「Timewitch」を設立し、代表取締役社長に就任。ビッグデータを活用したマーケティングやマイナースポーツの普及活動などにも取り組んでいる。
和田 淳史
上智大学経済学部経済学科卒業後、ボストンコンサルティンググループおよびアビームコンサルティングで新規事業策定、業務改革、システム導入などを担当。現在はSAP案件を中心に企業とフリーコンサルタントを直接つなぐマッチングプラットフォーム『quickflow』の運営や経営コンサルティング事業を行う株式会社Wonder Camelを創業し、代表取締役社長として活動している。
北野 唯我
兵庫県出身。2010年に神戸大学経営学部を卒業後、株式会社博報堂に入社し、経営企画局・経理財務局に勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年に株式会社ワンキャリアに参画。2020年同社の取締役に就任し、2021年に東京証券取引所マザーズ市場への上場を経験。情報経営イノベーション専門職大学の客員教員を務め、オンラインコミュニティ「SHOWS」を主催している。
上野山 勝也
ボストン コンサルティング グループ、グリー・インターナショナルを経て、東京大学松尾研究室で博士(機械学習)を取得。2012年にPKSHA Technologyを創業し、社会におけるAIやソフトウェアの活用に取り組む。内閣官房デジタル市場競争会議構成員、内閣官房デジタル行財政改革会議構成員、デジタル庁参与などの公務も務めている。